核酸は薬ではないのか?
核酸(DNA、RNA)は、地球上のあらゆる生命の基本物質であり、最重要の生体成分である。また日常のほとんどの食品にも含まれており、私たちはそれを消化吸収して栄養素として利用している。
だから多くの合成新薬のような“体にとっての異物=非生体成分”ではない。しかし栄養素や生体成分であっても“医薬品”として認可され、使用されることがある。
その意味で核酸が医薬品かと問われれば、日本ではまだ、核酸(DNA、RNA)は医薬品成分として認可されていない。また、市販の核酸補給食品は法律上は食品であるから、効果効能に類することがまったく書けない。
ただし海外ではすでに一部の国で核酸が医薬品になっている。
たとえば中国ではサケの白子を精製したDNA-Na(前出のサケ白子DNAと同じもの)とその低分子のものが経口薬と注射薬として下のように使われ方をしている。
急慢性肝炎、肝臓肥大
白血球減少症 血小板減少症
心筋炎、急性心筋梗塞
放射線障害、伝染病回復時の衰弱
貧血 増血不能症 栄養不良 老人性衰弱
骨折 火傷の治療促進
機能低下、めまい、心悸亢進など
フランスの場合は経口薬だけが、下のように適応症に使用されている。
また、ガン患者の治療補助用に核酸の分解物(ヌクレオチドやヌクレオシド)を使用する研究が欧米で盛んに行われており、将来医薬品として実用化されそうである。
実は日本でも、RNAやDNAの分解物(主にヌクレオチド)を手術後の免疫力の低下を防ぎ、治癒を早める目的の医薬品として実用化しようという研究も進行中である。これらの研究が実用化されれば、日本でも医療機関で核酸(分解物)の投与が受けられる時代が来ると思われる。
なお、RNAの原料であるビール酵母自体は、日本でも昔から医薬品としても認可されていて、下のような効果があるとされている。
胃腸を強くする、酵素や細胞を活性化する
腸内有用菌を強化し整腸を促進する、便秘の改善
肝機能の改善(脂肪肝の防止、肝硬変など)
悪酔い防止、抗ガン、制ガン作用
高血圧、糖尿病、脚気
低タンパク質血症、頭の老化防止、メニエル氏病、白内障
ビール酵母にはRNA以外に、たんぱく質、ビタミンB群、ミネラル、多糖体、ホップ成分など各種の有効成分が含まれているので、これらの複合的な作用が表3のような効果を生んでいると思われる。
そしてビール酵母を10g摂ると、高分子RNAが100~400mg摂取できるわけで、従来知られていたビール酵母の“効能効果の大部分に、RNAの働きが関与していると考えられる。