ガンとともに、増えている病気に糖尿病がある。
患者数は百数十万人、潜在患者は500万とも600万ともいわれる。国民病である。
糖尿病は成人病の源といいわれるようにいろいろな合併症をおこしやすく、失明や腎不全等の大きな原因でもある。
糖尿病といえば血糖値を下げるホルモンであるインシュリンと深い関係がある。
もしこのインシュリンが分泌されなくなればこれは大変なことである。血糖値は上がったまま下がらない、一生インシュリンの投与を受けなければならなくなる。
インシュリンは、すい臓のランゲルハンス島という組織のβ細胞で作られ分泌されるわけだが、遺伝子の異常でβ細胞が不足すると、インシュリンの分泌が低下することが明らかになった。
東北大学医学部の岡本宏教授らは、β細胞などすい臓組織を作る遺伝子(再生遺伝子)を突き止め、この遺伝子の命令によって作られるたんぱく質の合成に成功した。
すい臓の90%を切徐して糖尿病にしたラットにこのたんぱく質を毎日投与したところ2ヶ月間でβ細胞が再生し、インシュリンの分泌があり、血糖値も正常値になった。
岡本宏教授らは糖尿病学会でこの研究成果を報告し学会賞を受賞した。
原因が非常に複雑ではっきりしないために予防が難しく、しかも症状が出てからの治療が困難な病気であるガンや糖尿病の根本的な原因が、遺伝子の異常であることが明らかにされた意味は非常に大きい。
最近では、難病とされその原因が明らかでなかった病気、例えば、宇宙物理学者のホーキング博士が冒された筋萎縮性側索硬貨症の原因遺伝子が判明したり、原因のはっきりしないアルツハイマー型のボケの原因となる遺伝子が確認されたり、アトピー性皮膚炎も遺伝子欠損によっておこるとの報告等が次々となされている。
欠損遺伝子が明らかになれば、その遺伝子が作り出すたんぱく質の投与や遺伝子組み換え等による治療が可能になる。21世紀は今までのクスリとメスによる医学が根本的に変化する時代の幕開けである。