核酸の酵素による分解
核酸が遺伝子の本体であることはすでに説明した。すべての生物は細胞の集合体であり、細胞には遺伝子DNAとRNAがたくさんある。
特に遺伝子そのものである魚の白子(精巣)は当然のことながらすべての食品の中でもっともDNAが多い。
そんな遺伝子本体を食べて「なぜ人間は魚にならないのだろうか?」とか「人間の遺伝子になんの影響も与えないのであるうか?」といった疑問を持つ人が少なくないだろう。
答えは、そんな心配は全くないということだが、その理由について考えてみよう。
食品中の核酸はDNA、RNAだけでなくそれが分解してできたNT(核酸の構成単位:ヌクレオチド)、NS(核酸の構成単位:ヌクレオシド)、塩基、五炭糖、リン酸も含んでいる。
食品中の核酸は膵液中の酵素(ヌクレアーゼ)によって加水分解されNTになり、ホスファターゼ(酵素)によってリン酸がはずれてNSになる。NSはさらにヌクレオシターゼ(酵素)によって分解されて五炭糖と塩基に分かれる。
食べた栄養素は、小腸から門脈を通って肝臓に運ばれるが、核酸は門脈に到達するまでに、酵素によって分解されNTやNSになって吸収される。
それが、魚の遺伝子(DNA)をたべても魚にならない理由である。
魚の遺伝子構造は塩基(A、T、G、C)の並び方によって決まっているのであって(高分子状態)、塩基が1個しかないNTやNSにはなんの遺伝情報もないからである。
地球上の生物の遺伝子はすべてA、T、G、Cの四つの物質でできた高分子物質であり、消化酵素で分解されるとバラバラになるため、何を食べても同じ(遺伝情報は内である。
酵素とは
生物界には数十万種もの酵素がある。
核酸を分解するだけでもヌクレアーゼ(膵臓の酵素)、ホスホターゼ(酵素) ヌクレオシターゼ(酵素)三種類の酵素が必要である。
牛肉とか豚肉、大豆などのたんぱく質もそのまま利用されているわけではない。
やはり、酵素によってアミノ酸(すべての生物に共通の構造)や低分子ペプチド(アミノ酸が二つ、三つ結合したもの)に分解されて吸収され栄養になっている。
多くの酵素は、タンパク質部分に非タンパク性の補助酵素と呼ばれるものが結合している。
補助酵素の大部分はビタミンとNT(核酸構成単位:ヌクレオチド)からなっている。
ビタミンや核酸の成分も酵素と同様に生体内反応をスムーズにする役割をになっているわけだ。
ビタミンは核酸と一緒に摂取してより効果的で、
酵素は、高分子物質を分解するだけではなく生体反応(代謝)のすべてを触媒(反応をスムーズにするだけで、自身は何も変化しない)にしており、基質特異性(それぞれの酵素はきまった物質にしか作用しない)を持っている。
酵素は、タンパク質の一種であり、DNAの情報に基づいて合成されている。
DNAが損傷すると酵素異常の問題も生じる