清華大学がマウスを使った実験で細胞内で特殊な変化を確認したことを雑誌「Aging」で明らかにした。彼らはNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が老化した腎臓に与える影響について研究しており、NMNがタンパク質恒常性を持つことがわかったという。腎臓の老化プロセスに対する理解が深まることによりより効率的な治療法としてNMNを利用することが期待されている。
老化は腎臓病のリスクを高める
腎臓の老化は主に血液の不純物をろかする糸球体が劣化することによって生じる。
これは腎臓の回復力の低下につながり、腎不全や腎臓病を患っている患者の免疫力が下がることを意味している。
そこで清華大学のDeng教授らは、他の臓器の老化抑制に対してすでに有用性が示され始めていたNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)に着目した。
NMNは、細胞内エネルギーを生成しDNAの完全性を維持する働きを持つNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体である。NAD+は生物や人体で常に生成されているが、加齢により臓器機能が低下するにつれてその生成量は減少する。
近年、齧歯類を用いた多くの研究においてNMNを服用することで血液や組織中のNAD+量上昇を示す結果が出ている。現在は人体においても同様の結果が得られるかの研究が行われている最中だ。
NMNはタンパク質構成を若返らせる
実験では加齢により変化する27種類のタンパク質の量の比較が行われた。
老齢のマウスに対し4週間の間、2日に1回の頻度でNMNの投与を行ったところ、驚きの結果が得られた。
老齢マウスのタンパク質量は若年マウスのタンパク質量構成にどんどん近づいて行ったというのだ。加齢により増加してしまう19種類のタンパク質のうち16種類が適正値まで減少し、加齢により減少してしまう8種類のタンパク質のうち6種類が適正値まで増加した。
これによりNMNは腎臓のタンパク質量を若返らせる効果があることが示唆される。
さらにNMNは血液中の不純物を分解するペルオキシソームと呼ばれる物質の量も増加させる効果があることがわかった。
また腎障害特有の数値も大きく改善される結果となった。つまりNMNにより腎障害を未然に防ぐことができる可能性が浮上したのだ。
Deng教授らはNMNが腎機能の回復につながるのではないかと語り、腎機能の老化を語る上でタンパク質量の構成を比べることは有用であると話している。