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謎のゾンビ細胞とは一体何なのか、
ゾンビ細胞の本当の名前は老化細胞です。
老化細胞の蓄積による慢性炎症が老化を加速させる
普段意識することはないが、私たちの体には約60兆個の細胞があり、一部の細胞は、日々、分裂を繰り返している。
「その過程で、DNAが修復不可能なほど大きなダメージを受けたときに、細胞分裂を停止してがん化を防ぐ『細胞老化』と呼ばれる仕組みが備わっています。
細胞老化は、自分の体の細胞をがん化させないために、人間を含む高等動物が進化の過程で獲得した安全装置の1つです」と教授は説明する。
通常、古い細胞が分裂を停止して新しい細胞に置き換わるときには自ら死んで壊れるアポトーシス(細胞死)を起こすか、、免疫細胞『NK細胞』等に食べられて体内から消える。
ところが、細胞老化によって分裂を停止した細胞の中には、なぜか死なずに、臓器や組織、血管の中に残ってたまっていくものがあるのだという。
「細胞分裂を停止したのに死なずに組織にたまっていく細胞が『ゾンビ細胞』です。
老化細胞『ゾンビ細胞』は蓄積すると、SASP(サスプ:細胞老化随伴分泌現象という現象を引き起こします。
老化細胞の存在は60年くらい前から知られていたのですが、過度のSASPが慢性炎症を誘発し、がんや動脈硬化など加齢に伴って増える病気を発症させることが近年の研究で分かり、注目を集めるようになりました」と教授は話す。
SASPとゾンビ細胞 下図
SASPは、周囲の正常な細胞の細胞老化を引き起こし、さらに老化を加速させる。米国の科学ジャーナリストは、英科学誌の『ネイチャー』のコラムで、分裂をしないが死にもしない奇妙なこの老化細胞を「ゾンビ細胞」と表現した。 まるで死体が蘇るように、炎症を起こす物質を出して周囲の細胞の老化を加速させて仲間を増やし、血管、組織や臓器の機能を低下させるゾンビのような細胞というわけだ。
ゾンビ化した細胞を放置すると、肌へ悪影響が!
年齢や肌状態に関係なく誰にでも存在する『老化細胞』。
機能が衰えたこの細胞を、若く健康な肌であれば自然と取り除くことができ、このサイクルは一般的には「新陳代謝」という言葉で知られています。
ただ、取り除く力は年を重ねるごとに低下。
排除されなかった老化細胞(ゾンビ細胞)は、肌の中に留まり続けることになり、周りの細胞にまでダメージを与えてしまうのです。
そんなゾンビ細胞たちに対抗する存在として注目されるのが『NK細胞』。
全身をパトロールしながらガンやウイルス感染細胞、異物などを見つけて攻撃する免疫細胞で、誰の体にも備わっている大切な防御機能です。
いうなれば、ゾンビと戦うトラブルバスターのような存在でしょうか。
このNK細胞に『ゾンビ細胞』を排除する働きがあることが分かりました。
ただ、NK細胞の働きも年を重ねるごとに慢性的なDNA損傷によって弱まってしまいます。
ゾンビ細胞を排除するためには、NK細胞を活性化する、言い換えればDNA修復(核酸補給)の必要があるのです。
いつまでも若さと健康を保つために、ゾンビ細胞を殺す
ゾンビ細胞は、細胞内に存在する他の 2 つのタンパク質、プロジェリンとサーチュインによって制御されています。
プロジェリンは時間の経過とともに蓄積し、エクスポソーム [酸化ストレス、食品、汚染物質、薬剤、日光への露出、睡眠など、肌の健康に寄与する本質的に外的なライフスタイル要因] がこれを悪化させます。
基本的に、これは細胞を台無しにするだけのタンパク質です。
その結果、細胞は死ぬかもしれませんが、これらの有毒な細胞の1つになるかもしれません。
サーチュインはより良いタンパク質であり、長寿タンパク質と呼ばれ始めています – それらは核とDNAを保護し、その完全性を維持しようとします.
ゾンビ細胞は体内で自然に発生し、遺伝学と外部の攻撃者の両方の結果である可能性があると言います.
サーチュインを増やすのに役立つペプチド(サーチュイン酵素という良いタンパク質)を介してゾンビ細胞の量を減らし、老化細胞(ゾンビ細胞)の形成を止めます.
サーチュインを増やす方法
サーチュウイン遺伝子を増やす方法
- NADが増えるとサーチュイン遺伝子が活性化し、サーチュインとよばれる良いタンパク質(ヒストン脱アセチル化酵素)が作られます。
- 単なる「寿命を延ばすための遺伝子」ではないサーチュイン遺伝子からできるサーチュイン酵素という良いタンパク質は、エピゲノム(重要)が劣化しないようにコントロールして、「若く元気で寿命を30~50年延ばせる」ようにパトロールしています。エピゲノムの劣化を防ぐ以外にも、損傷を受けた遺伝子を修復したり、身体の慢性炎症を抑えたりする働きもあります。まるで、総合防災センターのような役割を果たしています。
- どうすればサーチュイを活性化できるのか。その鍵を握るのが、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質だ。NADは、細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギーの産出に欠かせない補酵素で、サーチュインを活性化させる役割を担うとされている。組織中のNAD量は加齢と共に減少するが、NADを増やすことができれば、サーチュインを活性化させ老化を遅らせる効果を期待できる。
- NADを増やす方法として、運動やカロリー制限などの有効性が知られているが、近年ではNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド、ビタミンB3からつくられる物質)の摂取なども注目を集めている。
- 核酸機能の強化(核酸は補酵素NADの形成を深く関わっています。)
ゾンビ細胞を殺す方法
腸内細菌叢に悪玉物質が増えると老化細胞(ゾンビ細胞)が蓄積
老化細胞に着目した老化制御としてまず注目されるのが、老化細胞(ゾンビ細胞)がたまることを防ぐための研究とその成果だ。
老化細胞がたまらないようにするにはどうしたらよいのだろうか。
肥満を防ぐことだ。
マウスを用いた研究で、高脂肪食を食べ過ぎて肥満になると、腸内細菌が変化して悪玉物質が産出され、それが肝臓に運ばれることによって老化細胞(ゾンビ細胞)がたまって過度の細胞老化関連分泌形質(SASPサスプ)が発生し、肝臓がんが発症するリスクが高まることを解明した。
そして、さらに怖いのは、高脂肪食で飼育されたマウスの約3割は、肝臓がんだけではなく肺がんも併発していたことだ。
また、肥満や脂質異常症などで、脂肪が肝臓に蓄積する脂肪肝から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)になり、肝臓がんを発症した患者の腫瘍を調べたところ、約3割の患者の肝星細胞が細胞老化(ゾンビ細胞)とSASPを起こしていた。
一般的に、NASHから肝臓がんになる場合は肝硬変を経て発症するが、老化細胞(ゾンビ細胞)が蓄積していた患者の中には、肝硬変を経ずにいきなりがんを発症していた患者もいたという。
「私たちの体の中には、30兆から100兆個の腸内細菌が存在しており、その構成は食事の内容や栄養状態によって変化します。
高脂肪食や過食が続くと、腸内細菌叢が変化して悪玉物質が増加し、肝臓がん以外にも大腸がんの発症の引き金になる可能性があるので要注意です」 さらに、高脂肪食によって腸内細菌叢に悪玉菌が増えると、がん以外にも、うつ病、認知症、糖尿病などにつながる恐れもある。
定期的に適度な運動を続ければ、老化細胞(ゾンビ細胞)の蓄積を抑えられる可能性もある。
中年マウスを高脂肪食で飼育すると脂肪組織に老化細胞(ゾンビ細胞)が蓄積してインスリンの分泌が低下し血糖値が上がりやすくなるが、有酸素運動をさせると老化細胞がたまりにくくなり、糖尿病リスクも改善するという。
ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は生活習慣病を防ぎ健康維持に役立つばかりか、老化細胞の蓄積を防ぐことにもつながるわけだ。
老化細胞(ゾンビ細胞)の蓄積を防ぐために重視するのは、慢性的にDNAを傷つけないようにする「体に優しい生活」だ。
メモ
「酸化ストレス、タバコ、食物中の発がん物質(農薬含む)、PM2.5(微小粒子状物質)、放射線、排気ガス、睡眠不足、紫外線、過度の運動、暴飲暴食は、活性酸素などが発生し、修復不可能なDNAダメージを引き起こし、老化細胞(ゾンビ細胞)を蓄積させ、発がんを誘発します。
日々の生活上、DNAダメージの要因になることはできるだけ避けましょう