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高血圧の原因
腎臓病など他の疾患の結果として現れる二次的高血圧症もあるが、比較的少数である。
大部分は(少なくとも初期のうちは)これといった原因もないのに加齢とともに血圧が上昇していく。このタイプを“本態性高血圧”と呼ぶ。
“本態性“というのは、”体質的な”という意味だが、本態性高血圧症には多くの場合、栄養欠陥が密接に関係しており、その代表的なものがナトリウムの過剰とカリウムの欠乏である。
また、カルシウムやマグネシウムの欠乏と、タンパク質(特にメチオニン等の含硫アミノ酸)の欠乏も本態性高血圧症の原因となりうる。
一方、外的な要因として極めて大きいのが精神的ストレスである。
強いストレスは即座に血圧を上昇される一方、各種の栄養の消耗を加速させ、また動脈硬化も進行させる。
そのため、強いストレスに長期間さらされる、一時的な高血圧が、“高血圧症“に移行し、なかなか下がらなくなってしまう。
なお、一時的な高血圧は、それだけでは健康上なんらトラブルを引きおこさない。
しかし高血圧の状態が続くと、全身の血管で動脈硬化が進行すると、血管が細くなり血管の柔軟性も失われるため、ますます血圧は上がっていく。
このように高血圧と動脈硬化はペアになって悪循環を繰り返すのだ。
動脈硬化症の原因と進行
動脈硬化症の大部分は、動脈壁の内側にコレステロールなどの脂質が沈着する“アテローム型動脈硬化症”である。
動脈硬化症の原因究明は、近年の医学・栄養学の中心テーマのひとつで、すでにかなりの部分が判明している。
その発生と進行の仕組みを整理すると以下の通りである。
動脈硬化の原因と進行1
動脈の内壁の細胞(動脈内皮細胞)が、活性酸素によって障害を受ける(遺伝子の一部が狂うだけの場合もあるし、細胞が死んでしまう場合もある。)
動脈硬化の原因と進行2
正常な動脈内皮細胞はコレステロールなどを付着させないのだが、遺伝子が狂った細胞や死んだ細胞の部分には、コレステロールなどの血中脂質が付着しやすくなる。
ただし血液中にHDLコレステロールが多いと、付着した脂質は運び去られてしまうので動脈硬化はなかなか進行しない。
一方、LDLコレステロールが多いと、脂質の沈着はどんどん進行する。
動脈硬化の原因と進行3
血液中の活性酸素や脂質(特に悪いのが過酸化脂質)が多いと、上記の①②が連鎖反応式に繰り返される。
血管壁の正常な細胞の多くが死に、そこがコレステロールの結晶や脂質沈殿物・瘢痕(はんこん)組織などで置き換えられ、その異常が血管内皮から中皮に進行していく。
とくに血圧が上昇していると、この現象は加速される。
やがて血管壁は厚くなり、内膣(血液の通る部分)は狭くなり、血液はながれにくくなって高血圧症が進行する。
特に動脈硬化の進行で損傷を受けやすいのが腎臓である。
腎臓には血液をろ過する糸球体という組織があるが、この部分は活性酸素と高血圧によって障害を受けやすく血管が破れやすい。
しかも腎臓は血圧を調節する働きを持つ臓器なので、腎臓が障害を受けるとコントロールが狂い、全身の血圧が上昇してしまう。
そのため、高血圧と動脈硬化のペアに腎臓の損傷が加わると、悪循環はますます加速されてしますう。
動脈硬化の原因と進行4
正常な血管内皮細胞は、血管内で血が固まらないようにコントロールしているが、動脈硬化が進行するとその働きも弱まる。
そのため、凝固した血液の塊が多数発生し、それが血管の細くなった部分にひっかかって、血流が極端に低下したり血流が止まったりし始める。
これが心臓や脳でおこると心筋梗塞や脳梗塞である。
また、血管の劣化に高血圧が重なって、特にもろくなった部分で血管が破れ始める。
これが網膜の毛細血管でおこるのが眼底出血であり、脳で起これば脳出血である。
そこまで至らない場合でも、全身の血流が低下し、さまざまな症状が多発する。
高血圧・動脈硬化対策・改善法
生活上の注意
すでに述べたように高血圧と動脈硬化はペアで進行しやすい。
どちらか一方を持つ人はもう一方にも気をつけたほうがよい。
両方に共通する留意点は、
- 強いストレスを避けること
- 体内の活性酸素を増やさないこと(タバコや過激な運動などを控える)
- 肥満を避け、適生体重を保つこと―などである。
高血圧と動脈硬化の栄養対策
すでに述べた部分を整理すると、以下のような栄養対策が必要であることがわかる。
高血圧動脈硬化の栄養対策
①ナトリウム(食塩)の摂取量を減らし、カリウムの摂取量を増やしてバランスをとること。
②カルシウムとマグネシウムを、バランス良く充分摂取すること。(適正二対一)
③良質なタンパク質を充分摂取すること。
④血中脂質を減らすため、カロリーと脂質摂取を適切にコントロールし、その一方で食物繊維を充分に摂ること。
⑤体内の活性酸素を減らすため、抗酸化栄養素(核酸、ビタミンE、Ⅽ,B2、βーカロチン、セレン、SOD様物質等)を充分に摂ること。
⑥HDLコレステロールを増やす食品(大豆レスチン等)を摂ること。
⑦遺伝子修復促進と損傷を受けた組織の再生のため、核酸を充分に摂取すること。
⑧血液の粘度を下げて流れやすくし、また血栓(血の固まり)防ぐため、DHAやEPAなどを充分に摂取すること。
⑨血管を強化するため、タンパク質、ビタミンⅭをはじめ、必須栄養素を必要量摂取すること。
尚、以上九項目の優先順位は個人ごとの状況によって変わるので、固定的に考えないこと。
高血圧・動脈硬化の食生活の注意
前項の九項目のうち、食生活の改善だけで充分に達成できるのも多い。できるだけ以下の内容を実践してほしい。
ポイント
(ア)減塩に心がける。減塩食用の調味用や酢、香辛料を活用する。
(イ)野菜をたくさん食べる。カリウムと食物繊維、β―カロチンなどが摂取できる。ク抜きするとカリウムが失われてしまうので、電子レンジなどで蒸すか、テフロン加工フライパンで少量の油でいためるなどして食べるとよい。減塩に注意。
(ウ)イワシ、サバ、マグロなど、EPAやDHAを豊富に含む魚をできるだけ食べる。これにより、良質なタンパク質もかなり摂れる。ただし減塩に注意。
(エ)上記以外の魚介類もどんどん食べる。これらは微量ミネラルや核酸が豊富な高タンパク食品であり、肉食に比べベターである。
(オ)海藻、キノコ類をどんどん食べる。ほとんどノンカロリーで、微量栄養素や食物繊維が豊富であり、血圧降下やコレステロール低下作用を持つ成分も含んでいる。
(カ)大豆やその他の豆類を多く食べる、良質なタンパク質、レシチン、マグネシウム、核酸などを含む。アク抜きしすぎないこと。
(キ)主食は、できるだけ未精製な食品(玄米、五分つき米、全穀類パン等)にする。マグネシウムをはじめとするミネラル類や食物繊維が摂れるし、ゆっくり消化吸収されるので血中脂質を上昇させにくい。
高血圧・動脈硬化の補助食品
※ビタミン・ミネラル・・・・
保険料(152頁)の上限を目安に摂取する。ビタミンE、C、β―カロチンは、徐々に増量して上限の倍まで増やしてもよい。
※核酸・・・・
サケ白子エキスとして一日1000~3000mgを目安に摂取する。
ただし動脈硬化と貧血が同時にある人や、血圧が相当高い人は、一日300mgから始め、二ヶ月目600mg、三ヶ月目1000mgに増量する。
万一血圧が上昇したら減量すること
※大豆レスチン・・・・
血中脂質の高い人は必ず摂ったほうがよい。粉末。顆粒状の製品を一日20~30g摂る。
※EPA・DHAカプセル・・・・
体内の活性酸素を減らすため、適量摂るとよい。
※プロテイン・・・・
体重1kg当たり1,2gの完全タンパク質摂取を目安にし、食事からの摂取が不足ならプロテインで補うとよい。
※食物繊維・・・・
プランタゴ、オバタ、グルコマンナン、グアカム、アルギン酸、ペクチン等の水溶性食物繊維がコレステロールの対外排泄に役立つ、血中コレステロールの高い人は毎時時に食物繊維の純量として2~5g摂るとよい。
素人判断は厳禁!必ず医師のアドバイス
すでに病気になってしまった人は、先の述べたように核酸を含むすべての必要な栄養素を“保険量”の上限レベルでまんべんなく摂取し。
場合によっては特定の栄養素をさらに増量すると、速やかな健康回復に大変役立つ。
また病気とはいえないまでもさまざまな症状で悩んでいる場合にも、ほぼ同様のことがいえる。
そこで病気や症状別に、参考となる最小限の情報を以上ににまとめた。ただし注意していただきたいのは、素人判断で自分の病気を診察して医者に行かずにこれらを実行したり、医者からもらった薬を勝手にやめたり減らさないことである。
できれば担当医の承諾を得たうえで実行するのが理想的であり、それが無理でも明らかに健康を損なっている状況の時は必ず医師の診断を受け、あわせてこれらを実行していただきたい。