市販の核酸食品にはどんなものがあるか?
この数年「○○核酸」と銘打ったり核酸の含有を強調した健康食品が多数出まわっている。これらを主要原材料と核酸の含有量で分類すると、次の三つに大別される。
①サケ白子やビール酵母由来の高分子DNA・RNAを、一日量中に充分量含有している製品(表示上の主要原材料や福原料はでうであれ、有効量の高分子核酸が含有されていればこの分類に含める)
②大豆醗酵(はっこう)液、乳酸菌醗酵液、醗酵玄米などを主原料とし、1日量中に高分子核酸DNA・RNAをごくわずかしか含有していない製品。
③核酸系化学調味料であるイノシン酸やグアニル酸を配合している製品。
これらのうち、①のタイプの製品だけが、本来の意味の核酸補給食品である。
②のタイプの製品は、一日量当たり数mg以下の高分子核酸しか含有していない。この量は一般食品中から摂取できる核酸の量に比べてもケタ違いに少ないわけで、核酸補給の意味はほとんどない。
ただし、②のタイプの製品に関しても、実際に使用してさまざまな効能があったという体験を耳にする。これは、原体製造の醗酵過程でペプチドや多糖体などの生理活性成分が生じていると考えれば説明がつく。あながちこれらの製品の有用性を否定することはできないが、この仮説を認めたとしても、その効果は核酸補給による効果とは別のものである。にもかかわらずこれらの製品が“核酸”をキーワードにして販売展開されている現状は問題が多いといわざるを得ない。
③のタイプの製品は、②のタイプ以上に問題がる。イノシン酸・グアニル酸は化学調味料で、当然価格も安い。それを原料表示を詐称して健康食品に配合し、高価格で販売することの商道徳的な問題がひとつである。
第二のより大きな問題は、有効性と安全性に関する不安である。化学的にいうと、グアニンという塩基のヌクレオチドがグアニル酸で、アデニンの構造が少し変化したイノシンという塩基のヌクレオチドがイノシン酸である。
つまり③のタイプの製品は核酸を構成するプリン塩基とピリミジン塩基のうちプリン塩基しか含んでいないのである。「核酸を摂って痛風の心配なないのか?」で解説しているように、核酸をたべるときは五種類の塩基をバランスよく摂り入れることが重要で、特定の一つか二つの塩基だけを多量に摂取することは体に負担をかける。
しかもプリン塩基だけ食べることは一層よくない。つまり痛風の遺伝的要素のある人が、③のタイプの製品を摂ると、痛風になったり痛風が悪化したりする危険性もあるということである。
以上の点から考えて、③のタイプの製品は“健康食品”の名に値しないと思われ、一刻も早く市場から消えてゆくことを願っている。まお、イノシン酸・グアニル酸は化学調味料であるから、③のタイプの製品は、食べた後、口の中に特有の旨味(うま味)が残るので、他のタイプの製品と簡単に区別がつく。万一あなたが食べている核酸食品に化学調味料の後味があったら、このタイプの製品である可能性が強い。