遺伝子の働きと栄養
ところで、あなたは遺伝子がわれわれのために何をしていると思われますか
- 多分、「遺伝子の損傷が病気の原因なんだから、何か病気に関係があるのだろう」
- 「親から子、子から孫へと伝わる遺伝に関係しているのだろう」と思われると思う。
確かにそれはそうだが、実は遺伝子はあなたの身体を作るといった大事な仕事もしている。
具体的にどのような仕事をしているのか、自動車の製造と比較してみたい。
まず、自動車を作るためには必要なものは何といっても設計図である。人間の身体も自動車と同じように設計図に基づいて作られている。
人間の設計図にあたるのが遺伝子DNA(デオキシリボ核酸)である。
車を作る場合、設計図の次に必要なのは実際に仕事をする人間である。
人間の場合は、RNA(リボ核酸)が体を作る仕事をしている。
RNAも仕事の内容によって三つに分かれている、
- 設計図を読み取り、現場にその内容を伝えるのがm-RNA(メッセンジャーRNA)、
- 実際に身体を作る仕事をするのがt-RNA(トランスファRNA)である。
- 車を作るには工場が必要である。人間の場合、r-RNA(リポソームRNA)が工場の働きをする。
- そして車を造る材料に相当するのが、人間の場合、タンパク質である。
- 車を造る時には道具が必要だが、人間の場合はビタミンやミネラル、酵素(タンパク質の一種)、核酸成分であるヌクレオチドがその道具に相当する。
最後に車を動かすことを考えてみてほしい。当然、燃料が必要である。人間の場合は、脂質、糖質、タンパク質を燃やしてエネルギーを作り出して使っている。
身体が何によって作られ、何をエネルギーにしているかがお分かりいただけたと思う。
このうち、核酸を除く他の五つ(糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル)が五大栄養素と呼ばれて重要視されているのはご存じである。
しかし、身体の設計図であり子孫に遺伝情報を伝える大事な働きをしているDNAや、人間の身体を作る働き手であるRNA。
そしてそれらの成分であるヌクレオチド(核酸成分)が、栄養素として十分に認知されているとは言えない。
その理由は、核酸は肝臓で作られているからだとされている。
最近、核酸の栄養に対する考え方が大きく変わってきた。例えば、日本の大手乳業メーカから乳児用粉ミルクに核酸成分(ヌクレオチド)を添加したものが発売されている。
ヨーロッパでは核酸成分の乳児用ミルクへの配合に関する指針が1991年に発表されている。「核酸は肝臓で作られてはいるものの準必須栄養素」という考え方が日本を含めた世界的認識になりつつある。