私たちが普段食べている肉、魚、米、野菜などは生物であり細胞でできているから、当然核酸を含んでいる。ただし精製された食品、たとえば白砂糖や澱粉油脂等はほとんど核酸を含んでいない。
ちなみに食品成分表でたんぱく質の量がゼロか極めて低い食品は核酸の含有量も同様と考えてまず間違いない。なぜなら食品成分表のたんぱく質の含有量は、ケルダール法というやり方で食品中のチッ素の量を測り、それに係数を掛けて算出しているからである。
たんぱく質はアミノ酸からできており、アミノ酸はチッ素を含んでいるからこういう方法が採られているのであるが、実は核酸もチッ素を含んでいる。つまり従来の食品分析法では、
たんぱく質と核酸の両方のチッ素を一括して測り、それをすべてたんぱく質の量として表示しているのである。たとえば、食品成分表でたんぱく質の量がゼロと表示されていれば、チッ素を含んでいないということになる。当然核酸の含有量もゼロと考えてよい。
では、高たんぱく質の食品はイコール高核酸食品かというと必ずしもそうではない。たとえば私たちの分析では、卵は100g(約二個)中に86mgしか核酸を含んでいない。また牛乳は高たんぱく質食品であるが、核酸をほとんど含有していない。
これは牛乳が細胞ではないことを考えれば当たり前である。私たちが測定した食品中の核酸含有量である。これを見ると核酸の含有量が飛び抜けて多いのがサケの白子で、フグの白子とビール酵母がそれに次いでいる。
実測していないが、タラの白子も同量と思われる。もし少し一般的な食品としては、いりこやちりめんじゃこが高核酸食品である。ここに掲載しなかったが、食品総合研究所の田島らが1989年の発表してデータがあり、それによると乾燥海苔、ハマグリ、カキ(貝)、大豆、豚レバーなどが高核酸食品として紹介されている。
このデータによると、牛肉、豚肉。鶏肉などの肉類や、マグロ、カレイ、イワシなどの魚も比較的多くの核酸を含有しており、従来高核酸食品の代表とされていたイワシは他の肉や魚と比べてほとんど差がない。
ただし、食品から核酸を摂取しょうとする場合、いくつかきをつけなければならない点がある。
第一は、できるだけ塩基のバランスのよい食品を食べることである。
塩基にはすでに述べたように主要なものだけで五種類(アデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル)あり、バランスのとれた摂取が望ましい。
どれかひとつか二つの塩基だけを多量に含有し、それ以外を欠く高核酸食品を偏食するとかえって体に負担をかける可能性が高い。たとえば表中のサバの項目を見ていただくと、アデニン、チミン、ウラシルをほとんど含まず、グアニンとグアニンから作られるヒポキサンチンだけを多く含んでいる。
たんぱく質の栄養的な質の善し悪しを判定するためのアミノ酸スコアという基準がある。同様の考え方で塩基スコアという基準を作るとすれば、サバは塩基スコアが低い食品ということになる。
注意の第二は、高分子核酸をできるだけ多く含む食品のほうが望ましいということである。
食品中の核酸成分は
①遊離の塩基
②塩基に糖が結合したヌクレオチド(NS)
③ヌクレオシドにリン酸が結合したヌクレオチド(NT)
④ヌクレオチドが多数結合した高分子核酸―という四つの形態で存在している。
このうち、④の高分子核酸を食べると、消化されてヌクレオシドやヌクレオチドに分解され、小腸、肝臓をへて、赤血球によって体のすみずみまで運ばれ、
ヌクレオチドの形で細胞にとりこまれ核酸合成に再利用される。
しかし、最初から塩基、ヌクレオシド、ヌクレオシドなど低分子の状態で摂取すると、少なくともその一部は消化の過程で分解され過ぎてしまい、吸収利用されなくなってしまう。前出の田島らの発表によると、肉類の核酸の半分、魚の核酸の約三分の二は低分子の核酸であり、消化過程で大分目減りしてしまう可能性がる。
なお缶詰めなどにすると加工中に分解が進むので、高分子核酸は一層減る。
以上の二点を考慮に入れて、核酸を摂取するための最高の食品を選ぶと、やはりサケの白子になる。核酸の含有量が飛び抜けて高いだけでなく、塩基のバランスも非常によく、ほとんどが高分子核酸なので吸収の際のロスもない。
ただしサケの白子は、さほど美味しいものではなく、サケが水揚げされる地域でわずかに食べられているだけであり、魚屋では入手できない。
一般に食されているタラとフグの白子はサケの白子に次ぐ良質の高核酸食品であるが、比較的高価であり、保存がきかない。さらに生の白子は多量の脂肪分を含んでいるので、その点も注意が必要である。
しかし何といっても生の白子類の最大の欠点は、特定の季節にしか入手できないことで、一年を通じて核酸を摂取しようとすると生の白子だけに頼ることは不可能である。ビール酵母はかなり質のよい核酸供給源で、毎日10g摂取すれば高分子核酸が少なくとも100mg以上摂取できる。
ただし、かなり苦いだけに相当のガマンを要求される一年中簡単に入手でき、食生活にも取り入れやすい高核酸食品としては、海苔、ハマグリやカキなどの貝類、いりこ、大豆などがおすすめである。若さと健康のために大いに召し上がっていただきたい。ただし、高核酸食品にはコレステロールが多い食品もあり、そういった食品は食べ過ぎないほうが望ましい。